原子力のあり方を考える

 

もんじゅ延命の疑問

 

物事は始めることよりも止めることが難しい。

 

もんじゅの歴史を見ると、本体着工(1985)、臨界達成(1994.4)、ナトリウム漏洩事故(1995.12)。運転することができたのは最初の1年半だけ。年月の経過は早い。ナトリウム漏洩事故を起こして以来、2014.11現在に至る19年間は稼働していない。その結果、計画されていた実験や研究をすることができないまま、高速増殖炉「もんじゅ」の賞味期限はとうに過ぎてしまった。

 

Monju
図1 もんじゅの構造図 (もんじゅの画像集より)

 

ダブリングタイム

高速増殖炉は夢の原子炉であり、消費した燃料よりも多い燃料を生産し、ウラン資源を数十倍も有効利用することができると宣伝されていた。私は、もんじゅのダブリングタイムは2〜3年であろうと想像していたので、もんじゅの資料の中に90年という数値を見つけたときはびっくり。これでは、もんじゅの寿命を45年と仮定すると、もんじゅを45年間運転する間に消費するプルトニウムを増殖するには、もんじゅ相当の原子炉2基を、45年運転する計算になる。


インターネットで調べると、ダブリングタイムは10年くらいが想定されている。これであっても、数十基ある原子炉の需要に見合った量のプルトニウムを生産することは難しい。夢と現実の間のギャップに疑問を感じる。

 

核燃料サイクルの疑問

「もんじゅ」Wikipediaによれば、高速増殖炉で使用されるMOX燃料(プルトニウムと天然ウランの混合物)は硝酸溶液に溶けにくいようだ。プルトニウムの含有率がおおきくなると、さらに溶けにくくなるとのこと。このため、現行の再処理工場でプルトニウムを抽出することができない恐れがある。高速増殖炉が生産するプルトニウムが現行の核燃料サイクルでは回らないことになる。夢の核燃料サイクルでは、抽出されたプルトニウムが高速増殖炉に戻され、プルトニウムが何度もサイクルの中を回ることになっていた。ここでも、夢と現実の間にギャップがある。

 

核武装

他方、炉心を取り囲む劣化ウランのブランケットでは高純度のプルトニウム239が生成される。プルトニウムには幾つかの同位体があるが、その中でプルトニウム239は核兵器に向いている。果たして、日本は核武装のために「もんじゅ」を保持しようとしているのだろうか。

 

高いコスト

もんじゅの歴史は、本体着工(1985)、臨界達成(1994.4)、ナトリウム漏洩事故(1995.12)。年月の経過は早い。臨界達成の1年半後に事故を起こして以来、2014.11現在に至る19年間は稼働していない。その結果、計画されていた実験や研究はできていない。設備を保有し続けるだけで年間のコストは約200億円。建設コストも高いが、維持コストも高い「もんじゅ」。

 

人材の枯渇

19年もの長期にわたり「もんじゅ」が運転されなかったせいで、現場を熟知する人材が枯渇しつつある(松浦祥次郎原子力機構長の談話)。この状況に危機感を持った原子力機構は「もんじゅ」の延命策として使用済核燃料に含まれる長寿命廃棄物(ウランより重い超ウラン元素)を消滅・短寿命化する研究を持ち出した。この案はフランスが高速増殖炉スーパーフェニックス用に作ったものである。

Superfenix

図2 フランスのスーパーフェニックス 

(高速増殖炉Wikipediaより)

 

国際共同研究

フランスは自国で消滅・短寿命化研究ができないせいで、「もんじゅ」の高速中性子を利用した短寿命化研究に参加する。日本原子力機構は国際共同研究という錦の御旗を掲げることができるので大歓迎。

 

人材育成

原子力分野の人材育成は大切であると思う。原子力発電を行ってしまった日本は、脱原子力あるいは原子力継続と関係なく、原子力人材は必要である。それにしても「もんじゅ」は大変高価な人材育成の教材。人材育成には、中性子の振る舞いや臨界現象を学習することができる実験設備、新しい原子炉モデルを考案する思考実験なども有効であろう。老朽化した臨界実験装置の更新が不可能に近い現実は誠に残念である。

 

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